2011331

 

家庭用浄水器における放射性物質の除去性能について

Removal of radioactive material through a water purifier

 

福島第一原子力発電所の事故に起因する放射性ヨウ素が首都圏の水道水より検出されたが、家庭用浄水器で除去できるか検証してみた。

 

1.予備実験

放射性ヨウ素の除去を確認する前に放射性でないヨウ素が除去できるか予備実験を行った。予備実験ではヨウ素を含むうがい薬を水で希釈し浄水器でろ過した。うがい薬は褐色であるが、その色は水に含まれるヨウ素分子によるものであるため、ろ過前後で水溶液の色が変わればヨウ素をろ過できる可能性が期待できる。

1.1実験方法

1)うがい薬(ポビドンヨード製剤)を水で3%程度に希釈した。

2)希釈した水溶液を浄水器(*1)でろ過した。

(*1)浄水器の仕様

ろ材:銀化活性炭、イオン交換樹脂

3)ろ過前後の水溶液の色を目視で確認した。

1.2実験結果

ろ過前の水溶液は褐色(Fig.1)であったが、ろ過後は無色透明(Fig.2)になった。無色になったことから、浄水器でヨウ素の除去が可能であることが予想できた。

      

 

2.除去実験

予備実験の結果より浄水器でヨウ素除去の可能性が証明できたことから、水道水の放射性ヨウ素除去の実験を行った。

2.1 実験方法

1)予備実験で用いた浄水器で水道水をろ過した。

水道水採取時間:2011323日午後000

採種場所:千葉県船橋市(供給:千葉県水道局)

2)ろ過前の水道水とろ過後の水道水をそれぞれ500mLポリ瓶に入れて容器を密封した。

3)500mLポリ瓶に詰めたろ過前後の水道水をゲルマニウム半導体検出器(*2)で測定した。

〔測定条件〕

測定時間:2000

BG測定日時:20113221600

BG測定時間:50000

ろ過前水道水測定日時:20113291853分(減衰時間78.89時間)

ろ過後水道水測定日時:20113292109分(減衰時間81.15時間)

 

2.2実験結果

ろ過前の水道水では、ヨウ素131(I-131)、セシウム137(Cs-137)、セシウム134(Cs-134)の3核種が検出された。ろ過前後の測定結果をTable.1に示す。

Tabel.1 浄水器による水道水ろ過前後の放射能濃度(Bq/L

          核種        

ろ過前

ろ過後

検出限界値

I-131

73.88

46.94

4.97

Cs-137

7.90

ND

1.45

Cs-134

6.56

ND

1.54

ND:検出せず

また、測定結果のスペクトルをFig.3Fig.4に示す。

Fig.3 ろ過前水道水のスペクトル

Fig.4 ろ過後水道水のスペクトル

 

以上より浄水器でろ過を行うと、放射性物質が除去できることが判明した。1回のろ過でヨウ素131については約36%、セシウム134、セシウム137についてはろ過により検出限界値未満になったため定量的な評価は難しいが、約8割は除去できると思われる。

 

参考までに、千葉県水道局発表の水道水の測定結果をTable.2に示す。

Tabel.2 水道局発表の放射能濃度(Bq/L

核種

325日採取

326日採取

I-131

4576

4564

Cs-137

ND

ND

Cs-134

ND

ND

千葉県水道局発表の「千葉県水道局水道水における放射線量の

測定結果について」より北総浄水場と栗山浄水場の値を転記した。

 

ヨウ素131については発表値とほぼ同程度の濃度であったが、セシウム134及び同137については発表値と異なっているが、濃度が低いため水道局の測定に用いた検出器では検出できなかったものと推測される。水道水の測定などではシンチレーション検出器で測定を行うことが多いようで、今回私が測定に用いたゲルマニウム半導体検出器に比べると性能が劣るためである。

 

3.まとめ

水道水に含まれる放射性物質を家庭用浄水器で除去できることが確認できた。これまでに水道水からは厚生労働省が定めた乳児の暫定基準値(100Bq/kg)を超える放射性ヨウ素が検出されているようであるが、家庭用浄水器で暫定基準値以下にするためには、例えば323日に東京都の金町浄水場で検出された210Bq/kg100Bq/kg未満にするためには、浄水器でろ過した水を再度ろ過すれば基準値を下回ることになる。暫定基準値をどの程度気にするかは個々の判断ではあるが、安心を求めるのであれば、水道局の発表する濃度を確認し浄水器で2回程度ろ過して使用すればよいと思われる。なお、今回実験に使用した浄水器のフィルターはメーカの発表によると200Lのろ過能力があるとされているが放射性物質にも同等の能力があるかは確認できていないが、塩素や重金属の除去が出来るのであれば、おそらく放射性物質についても同じ傾向になると思われる。

 

4.おわりに

乳児の暫定基準値を超えた地域ではミネラルウォーターが品薄になるなど過剰な反応を示されている方もいるようであるが、乳児や幼児など子供に対しては摂取を少なくしたいと思うのは親なら誰でも思うかもしれない。今回の実験結果から浄水器も有効であることがわかり是非参考にしていただきたい。また、今回の実験に用いた浄水器以外で同じ結果が出るとは限らないので注意が必要である。

なお、実験結果は私的な調査の範囲であり、この結果に起因して生じたいかなる損害に対して私は責任を負えません。あくまで、自己責任で浄水器を利用していただきたい。

以上