2006年2月25日(日)、例年よりは遅くですが、
宇治の大吉山で《せんぎょ》が行なわれました。

 他所の地域では寒施行と呼ばれている行事です。
この宇治の地域では《せんぎょ》と呼ばれ、
《施行》とも書かれますが、《千行》と書く人もいます。
どちらが本当かはっきりしないというのが地元の人のお話です。

 昨年の12月に出発した『わくわくシアター』の新作『きつねのまんま』は
宇治民話の会が書かれた本の中の一話を元にしているのですが、
そのお話「かえしてゃ」の元のお話を語られたのが
木村長次さんというこの地域のお年寄りです。

 民話の会の方に紹介して頂いて、夏にお会いし、
その際に、お話の背景になっている《せんぎょ》を今も行なっているという事をお聞きしました。
行なう時には是非ご一緒させて下さい、とお願いしていたのです。

 《せんぎょ》というのは、大寒や寒の日の夜に山に登って、
狐や狸の出そうなところの、木の葉の上に
小さく握った赤飯と、煮干と、お揚げをお供えして廻る風習です。
西日本の各地で《寒施行》《野施行》などと言って同様の風習が伝わっているようです。

 さて、劇団も長年宇治で活動していますが、
今も宇治でその様な行事が行なわれていることは、今回初めて知りました。
ご一緒させて頂くにあたり、劇団の者がお揚げを切って用意しました。

 手にはナイロン手袋。それは、地元の方が用意して下さいました。
 夕方、そろそろ暮れかける6時に宇治上神社に集まりました。
地元の方は十数人。昔は子どもも参加していたらしいですが、
最近は子どもも減って、今回は子どもの参加はありませんでした。
劇団からは私を含めて4人が参加。
地元紙の洛南タイムスの記者の方も来られていました。
 お当番は持ち回りでされていて、その方の合図でいざ、出発。
地元の皆さんに長老と慕われている長次さんは、もう足元が危ないという事で
今回はお見送りでした。
懐中電灯をもって、ハイキングコースになっている大吉山へ。
坂の曲がる角々などに順にお供えをしていきます。
ちょっと木の葉を集めて、その上に
赤飯と鰯とお揚げを置いていきます。

「せんぎょ〜、せんぎょ。」と声をかけながら。
曲がり角や、石の上、木の根元などに
 大吉山の展望所で一休憩。
町内会長さんが用意して下さったお菓子等を頂きながら
宇治の夜景を見て、一息。

お赤飯(他の地域では片手握りの小豆飯とも言われています)は
こんな風に小さく握って、タッパーなどの容器に一杯用意してありました。

 展望所から先はハイキングコースではなくなり、道も少し険しくなります。
そこから朝日山へ。
朝日山の上には昔宇治川から引き揚げられたという石の観音さんを奉っている
観音堂があり、そこで般若心経を唱えます。
その近辺にあるお地蔵さんには、新しい前掛けを着けます。
この前掛けには子ども達の名前が書かれています。
 新しい前掛けで清々しいお地蔵さん。
どうぞ、子ども達を守って下さい。アン!

 実際に《せんぎょ》に参加させて頂いて、
「せんぎょ〜」の掛け声の様子、
そして道々に聞いたお話などから
人々と山(自然)の結びつき、その中にある暮らし、
そして、今近郊の山に起こっている変化、
この行事の持つ様々な意味を肌で感じることが出来ました。

 「きつねのまんま」というお話は、その寒施行の事を伝える為のお話ではありませんが、
背景にある人と自然との関わり、昔の人々の暮らしぶりと考えなどを
振り返ったり、話題になったりするきっかけにもなれば、良いなぁと感じました。
この空気をお伝えできる様に、芸に精進します。

 さて、携帯のムービーも撮っているのですが、
それは絵が欲しかったのではなく、音声を撮っておきたかったので。
このファイルが、はたしてうまく再生できるか自信ないので、
挑戦しようと思う方は、見るというより聞いてみて下さい。
3gpというQuick Time等で再生できるファイルです。

MOL006.3gp へのリンク

 寒施行に関するお話では、絵本で
「こんこんさまにさしあげそうろう」作:森はな 絵:梶山俊夫  PHP研究所刊
の素敵なお話もあります。
ご参考にご覧下さい。


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